「雨はまっぴら」な團菊祭と、神谷町小歌舞伎 3rd (2025年5月に見たもの)

2025.5月に見たもの
土日に雨が多くて、弁天小僧の「雨はまっぴらだぜ」の台詞が大変リアルな月でした。今週も雨かい…と思いながら支度してました。
いつもなら座席下に無造作に荷物を押し込めるんですが、濡れ物を「上手く始末」するのがちょっと手間。着物の方も気を遣われたのでは。
第三回神谷町小歌舞伎(2025.5.2 浅草公会堂)
5/1、2の2日にわたる公演の2日目に観劇。
パンフレットがびっくりするほど売れてない、と、昼公演終わりにロビーに出てきてくれた福之助が言っていた。大変じゃのう、自主公演は。
なにしろ、菊五郎襲名公演の初日と同日なんだもの。それに今年は忠臣蔵やらなんやらでもの要りすぎて、財布の紐が固くなりそう。
通常のイヤホンガイド以外にスマホで聴けるイヤホンガイドが用意されていた。浅草は客席に電波が入るので、幕間に席でコンテンツをダウンロードできて便利。歌之助が原稿を書き、歌之助、芝翫で読みを担当していた。
「弥生の花浅草祭」
今年は複数の自主公演で「弥生の花浅草祭」がかかる当たり年になるらしい。
神谷町一門はひと組で四段ではなく、踊りごとに出演者を変えて皆で研鑽を積む方式を取っていた。
いいなと思ったのは、武内宿禰と神宮皇后(芝歌蔵、橋光)、あと国侍と通人のやつ(橋吾、翫央)。
三社祭は悪玉橋之助、善玉福之助。組体操感がある。
石橋は橋三郎、翫延。毛振りに勢いがなく、途中しおしおする。がんばれー、がんばれー。
「義経千本桜」四の切
もう一演目は、四の切。忠信は歌之助。いくら狐でも早口過ぎないか。ご挨拶も結構早口だったので普段から早いのかも。
本人の希望で澤瀉屋型だが、宙乗りはないので、幕外での振りが長めで、花道を引っ込む形。この後に奥庭がついていて、いつもは動かない老夫婦みたいに見える川連法眼と妻飛鳥の武家らしい勇ましいやり取りが見られる。橋吾の法眼が立派。
この演目の見ものは川連法眼館で橋之助が静御前をやっていること。
声がきれいだし、姿も良い。小刀を持って極まると立役っぽいが気になったのはそれくらい。それが次の場では敵役になって出てくる。この役は福之助でもいいのに、福ちゃんは義経。三兄弟で比較的回って来なそうな役を敢えてやっているのだろう。三社祭の後の二役でおにいちゃんたいへんだ。
こうやって一門全体でものづくりするの大切なので続けていってファンを作ってほしい。
團菊祭五月大歌舞伎
細かく言うと「松竹創業百三十周年 尾上菊之助改め 八代目 尾上菊五郎襲名披露 尾上丑之助改め 六代目 尾上菊之助襲名披露 團菊祭五月大歌舞伎」
歌舞伎座のアナウンスが変わった。(…芝居の話からじゃなくてごめんなさい。)
今月から、はやりやまい対策モード脱出らしい。
前に大向こうが復活したのは團十郎の襲名がきっかけだったと思う。
今回菊五郎の襲名で大向こうを特定の場所で掛ける制約がなくなった。
#アナウンスのことは末尾で書く。
昼
八代目菊五郎と六代目菊之助襲名ということで、富士山の柄の祝い幕が迎えてくれる。
寿式三番叟
義太夫による”とうとうたらり”が結構な低音で始まる。
千歳は雀右衛門。紫の素襖で中は赤の着物。箱を持ってくる附千歳が米吉。浅葱の素襖に朱鷺色の着物。二人とも女方でやっている。きれいねー。凛としてる。
翁は又五郎。腕を掲げた先に月があるのがみえるよう。踊りが多いので一度イヤホンガイドを借りた。箱の中身は面だと初めて知る。今月のガイドは踊りの成り立ちなどとても詳しい。知らんことばっかりだな。
厳かないいものを見た感。
三人が退場すると、下手の隅っこにいた松也の黒い三番叟が舞台から花道に移り、扇で舞台を指すと、他の四人が大ゼリから上がってくる。ぶんっ(←松也の遠心力)、バサっ(←松也の袖)、ざーー(セリ)。五色の衣裳。黒・松也、青・萬太郎、紫・歌昇、緑・種之助、黄・右近。(右近はやっぱウコン色だからなの?)
赤がありそうなものだけれど。
最近花形が数人出る踊りでは個性ばらばらになるのがよくあったが今回は相当合わせている。合わせることをよしとした振付なのだろう
この種のマスゲーム的な踊りは最近だと陰陽師の式神を思い出す。
拍子にのり、竿になりカギになりフォーメーションを変えながら動き続ける。 上階から眺めるのがいいかもしれない。扇を床に五枚置いた所など上からだと丸く見えてきれい。
ほかが個性を抑えペースをキープしている中で歌昇が饒舌な踊りをしていて面白い。種太郎と並ぶタイミングがあると、反対側は右近萬太郎の組になるので、カラーの差がでる。歌種が楽しそう組、右萬が端正組と言ったところ。松也も案外崩れない。今回は五人均衡でなく、リーダー的位置になっている故に、堂々としている体にみえて、なるほどねーな感じ。
三番叟は疲れてない時にやるべきだな。やっぱ。
みんな肩を組んでにこっとしてるとこがあって子孫繁栄を願う詞もあいまって面白かった。
(ところで、昨夏の裏表太閤記の大喜利所作事で三番叟をやった時はやっぱり五人五色の三番叟で、アイドルのライブみたいという感想をちらほら見た。今回は私の観測範囲ではみんなゴレンジャーって言ってる。以前に萬斎さんが菊之丞さんや尾上流の踊りをぐにゃぐにゃしない踊りと言っていた。それも印象に関係してるかもしれない)
團菊祭で菊五郎劇団と播磨屋が半々の演目というのはあまりないかもしれない。この座組では新作(ナウシカやFFX)や浅草歌舞伎での結びつきが想起される。
八代目菊五郎を賀ぐまつりが、この新しめの世界との繋がりから始まる。これがあって、團菊と玉三郎(女方の技)と劇団の仲間があって、最も身内の世界=弁天小僧で締まる。八代目をめぐる世界の構造が垣間見えるような気がする。
歌舞伎十八番の内 勧進帳
團十郎の弁慶に新菊五郎の富樫。
新菊五郎の希望で、團菊らしいものをやりたいと決めたらしい。
襲名演目よりも前に菊五郎8が出てもいいのかと團十郎に心配されたそうな(イヤホンガイドのインタビューより)
問答が対話として面白かった
ちゃんと話を聞く富樫とちゃんと説明する弁慶。
なんだか学芸員と客みたいで落ち着いちゃって、他にご質問があればどうぞ?の雰囲気が漂う
もうちょっとピリピリとした空気があってもいい
(後半日程では緊迫感が出てきた)
義経は梅玉。ベテランが義経の時の「判官御手を取り給い」は本当に手をとってくださるのがわかる。
これを受けられる弁慶がいてほしい。
四天王は男女蔵、松也、右近、鷹之資。音羽屋組半分、團十郎の一座から半分。
常陸坊が男女蔵の代までおりてきてしまった。鷹之資は勧進帳の四天王たぶん初めて。やっと出られた。良かったね。
解説があるとなるほどそう受け取ってほしいのか…とわかるので、いつもは眠くなる所で感動した。感動するにも先達が要るんだね。
三人吉三巴白浪 大川端庚申塚の場
時蔵のお嬢、彦三郎のお坊。
二人の気持ちのいい七五調の応酬が同じ世界っぽくていい。
太刀合いに至り、この組み合わせ正月に見たわ、それで座りが良かったんだわと気づいた。
対立し合っている間が魅力的。
時蔵はこのところ女武道づいていたので、そういう風情もある。
錦之助の和尚はお人好しでちゃっかりさんに見えた
新解釈で別の芝居ができそう
おとせは莟玉。少しの出番でもったいないくらいのかわいさ。そして元気そう。
京鹿子娘道成寺 三人花子
新菊之助、新菊五郎、玉三郎で三人花子。
聞いたか坊主や、まいづくしがある構成。
白拍子は親子二人で出て、案内を頼むところで新菊五郎だけが舞台へ、新菊之助はすっぽんに消えてた。
花子と所化で色即是空の問答。さっきから問答繋がりだな。
その後は二人になったり三人になったり誰かが残ったり。
新菊之助は、知ってたけど、この年頃のこどもの中では別格に上手い。
親子で踊る所は息が合っている。おとなびた感じもある。
ひとりになるとさすがにこどもらしい大変そうなところがわかる。三連の笠も勢いで回さないと回らない。
玉三郎と新菊之助二人の踊りでは、この子は玉三郎と踊ることに間に合ったんだなと思いつつ、玉三郎の孤高さも見てしまう。出たり消えたりは負担も考慮してだろう。
最後は三人の花子が全員鐘に取り付いての幕。三体は絵柄がすごい。
夜
義経腰越状 五斗三番叟
義経腰越状は見たことがあるはずだがだいぶ昔で全然覚えていない
そういえば目釘ばら撒きのくだりあったかもなあくらい。
夜はガイドなしにしたが、ヒアリングが結構難儀で一生懸命聞かないといけない。
3回見たらちょっと意味がわかってきた。詞の中に面白味がある。
あと、これは今回に限りかもしれないが、全体を見ようとするより松緑をちゃんと見る方が面白い。たぶん。
初っ端は、鳥追いの笠で全く顔の見えない雀踊り達と色若衆の六郎(左近)の立ち回り。
(この雀踊りちゃんたちは、写真を見ても前向きなのか後ろ向きなのかよくわからないw)
雀踊りさん達が割とアクロバティックな技も繰り出してるのに、相当ゆっくりで長く、だれる。もうちょっと早くしちゃだめなのかな。(後半日程は少し面白くなったかも)
六郎は紫のほっかむり。それを取ると、きのこみたいな前髪(掴み立て)が出てくる。この形のほっかむりはたまに見るが中がそうなってたからかーっていうのが驚きポイント。ひとつ学んだ。
よく聞くと最初、出の前に、雀踊りを所望だ合点かー?合点だーみたいな声が鳥屋からかかっている。それを六郎が邪魔しながら諫言に出てきたのだ。そりゃ義経も怒るよね。ライブの途中に家来乱入してんだもん。
義経は萬寿。怒った高貴な人が似合う。遊んでるくせに正論も吐く。
三郎は良心担当の権十郎。わかったようなわからないような事を言う人。
主人公五斗兵衛は松緑。読み方は「ごとうびょうえ」。
顔は殆ど作っていない。砥の粉の化粧で「きれいなジャイアン」みたいな顔をしている。(口上のほうが化粧が濃い。浜松屋の鳶頭は更に濃い。ちょっとずつ足してる?)
坂東亀蔵と種之助のワル兄弟に五斗が酒を勧められる所で結構お客様が笑っているが自分はそこまでのテンションに持っていけない。
あれはお酒の飲める方の共感の笑いなんだろうか。
後半は、酔ってるけど見当識はあるみたいな塩梅で、竹田奴たちをてなづけていく。その辺が軍師の資質の表現なんですかね。
この段になると、きれいなジャイアンが文楽の人形みたいな顔に見えてくる。
竹田奴がわあわあ騒いでるのを、この線から出るなと言い、座らせて、手はおひざ。まるで幼稚園の先生なんだな。ここがいちばん好き。奴さん達を凧にしたり、紙相撲にしたり。
目貫の値を聞かれて、獅子は十六だの、月の兎は子持ちでサンゴだから十五だの、適当なことを言った後いちばん値が高い三番叟をくれと言われて、目貫をばら撒いてやっと三番叟まで来たよ。
花道を竹田奴達が組になった馬(人力)で引っ込む時に、五斗は屋敷を振り返って何か言いながら去っていく。ばーか、ばーかみたいに見えたけど、あれは何を言ってるんだろうね。
八代目尾上菊五郎 六代目尾上菊之助 襲名披露 口上
誰が出るか直前まではっきりしなかった。七代目が見られて本当によかったよ。
七代目菊五郎から襲名の次第を紹介。上手に向かって松緑、團十郎、梅玉。そこから最も下手の玉三郎へ移りまんなかに戻る方向で楽善までお祝いがあり、新菊五郎、新菊之助の口上。
團十郎は、新菊五郎とのエピソードを毎日捻りに捻り出していたらしい。学校帰りのお稽古の話や飲みに行った話など。あと坊主頭の話をしてたな。
梅玉は梅幸や七代目菊五郎の話を担当しているし、松緑は殆ど語らないので、團十郎が面白ばなしを一手に引き受けていた。
(私の認識では、遥か昔は元菊之助と元新之助は一緒に行動してる感じだった。それが團菊祭でもはっきり成田屋音羽屋の座組が分かれて殆ど共演なしになった時期があり、どういうわけなんだろ?と思っていた。
ところが2,3年前から、團菊の再構築が始まった気配があり、松緑は独立して支店を任されたみたいな感じだ。七代目を真ん中にして元菊之助と松緑が並ぶ座組の時代が終わったのだと思う。)
菊五郎の歴史の中で史上初めて二人の菊五郎が並び立つことと相成りましてございます
と、八代目菊五郎が挨拶する。
自分は七代目が菊五郎以外の名前になることはないだろうと思っていたのでそこは、さもありなんだが、菊之助がいい時期に菊五郎になりつつ、父も菊五郎のまま。切実に呼び分けのスタンダードがほしい。(うちのブログはたぶんおやじと呼ぶ)
後列は菊五郎の家のお弟子さん10人。センターは菊市郎。向かって右に梅之助、左に菊三呂(新旧音女ちゃん)から左右にずらっと。
ほかの音羽屋や劇団にゆかりのある幹部は列席せずコンパクトだ。七代目菊五郎の体調を考慮、と、小学生疲れちゃうからかな。
それでも、偶々私の席の隣にいた人は大名跡の襲名は流石に豪華だと話していた。地元で三人くらいの御目見得口上を前に見たらしい。
親戚だらけの長い長い口上が懐かしいけれど、今月は顔寄せ手打ち式を公開でやることでそれに代えていたのかもしれない。
弁天娘男女男白浪
浜松屋、稲瀬川(ちびっこ)、極楽寺山門・滑川
都度都度の感想は別途長々と書いたのでそちらを。
弁天小僧と年下の南郷 (少年は変わりゆく 八代目菊五郎襲名&松也 2025.5 歌舞伎座)
自分にとっては、歌舞伎に興味を持つことになったきっかけの演目で、他の何倍も見ている。それでもまだ新しい発見があった。だって今まで弁天しか見てなかったもん。
序幕
八代目菊五郎の弁天、松也の南郷、團十郎の日本駄右衛門。
月前半で見たときは昭和の頃の七代目菊五郎と初代辰之助コンビの浜松屋に似ていて、近年の七代目の浜松屋とは違うなという印象を持った。
声が新菊五郎の自然なトーンになっている。
だが「しらざあ言って聞かせやしょう」と「俺がことだ」は今まで見たことがないほど大袈裟にしていて、世話に、世話にという呪縛からそこだけははみ出してみたかに見えた。
それ以外でお客さんの反応をとりに行く所は薄めで、割合さっさと終わってしまう。
もうちょっと楽しくならないかなと思ってたら最後に見たときは少し遊びも入って、面白くなっていた。
初役の松也は、カッコいい系の南郷だが、着替えなどの余白がまだぎこちなく段取りを追いながらの部分があるように思う。弁天が何かを始めたら南郷が煙草を詰め始めるとかあるんだろうなあって見てしまう。
年齢的に自然に南郷が兄貴というわけにいかないが、日を重ねるうちに立派になり、楽しげな2人になった。
花道で弁天に予想外のやりとりを仕掛けられて面食らってるところに、松助さんのリアクション控えめな南郷も思い出したりした。亡くなって20年。松助さんの役を重ねて思い出せることが嬉しい。
稲瀬川勢揃いは新菊之助をはじめとする子供世代
左から眞秀、梅枝、亀三郎、菊之助、新之助。(南郷、赤星、忠信、弁天、駄右衛門)
近くの席の人が一代前の新之助、菊之助たちのちびっこ五人男を映像で見て以来、いつかこれを観るのが夢だったと言っていた。わかる。すごくわかる。私もテレビで見たあれは強烈に覚えており、またそれが再現されることに感慨がある。
#ちなみに、同じく舞台の並び順で、亀三郎、勘太郎、亀寿、丑之助、新之助でした。今となっては、勘九郎(当時勘太郎)が南郷で、彦三郎(当時亀三郎)が忠信のほうがニンかなと思ったりするが、そもそも勘九郎が出たら弁天に回るよね。
今回も(真秀に関しては違うが)親に回ってきそうな役がそれぞれ当たっている。
小さい梅枝が傘を震わせながら赤星の「今日ぞ命の明け方に」の微妙なニュアンスをこなしていた。懐に手先を差し入れる型にも萬屋を感じる。
亀三郎は自分の顔に合う化粧が上手く、七五調をしっかり会得している。(かおの指導は、やゑ亮だそう。)
眞秀は南郷の早めの間を再現しようとしていた。長い脚をぬっと出して目力を感じる見得。
菊之助は鼻声に悩まされ、懐手に苦戦しつつきっちりの極まり。
新之助は成田屋過ぎる台詞回しで七五調にとらわれない(そこはとらわれてほしい)。
捕り手が子供たちの背丈に合わせて配備されてるのも面白い。
二幕目
幕間を挟んで屋根の立ち回りからは大人に戻る。
狼(片岡亀蔵)が斬られて落ちた後、最初から20名くらいの捕り手がかかってくる。竹梯子も持っていて見栄えが派手。
昔の映像を見ると、屋根のちょうど正面真ん中(一番上ではない)辺りに段があって弁天が見得をしている。
今回は屋根の右端一番上までのぼっている。ここは三階にいると弁天が全く(足の先すら)見えないので微妙だと思う。
歴代の立ち回りの名人が参戦していて、さっき番頭で出ていた橘太郎が2回も返り落ちしていた。橘屋!の声がかかるので分かる。
名題は筋書の舞台写真に名前が載っていた。玉雪、新十郎の名前も見えた。
弁天が捕り手を蹴散らして、立ち腹にいたる前に、川を気づかいつつ家の宝の胡蝶の香合を思いやるところでは、八代目の弁天特有のストーリー性を感じる。そういうところが八代目のいいところだろうし、でもすっきりした七代目の様式美で見たいなと思わせるところでもある。
新しい菊五郎の一座は「思い」や通しとしての「背景」を大事にするのだろう。
それは菊五郎だけでなく、八代目と少し下の世代の多くが持っている傾向のように思う。
襲名が落ち着いたら、青砥稿花紅彩画の通しを是非かけてほしい。
ラストは山門の上に日本駄右衛門、下に青砥(七代目)、伊皿子(八代目)で幕切れとなる。
通常青砥の家来は2人いるのだが、今回は1人。(千穐楽だけ新菊之助が出て来て本来の人数になったそうな。)
七代目様お元気でなにより。
この場面の何がすごいって、最後の最後で團十郎が見せる見得の顔がすごい。目を剥いて、大口を開けて幕が閉まるまでずっとその顔のまま。もはや吉例睨みでなくとも色々退散してる気がする。
幕見もまじえ多分五回観たのだけど、本当の本当を言えば、見るたびにもう七代目の弁天でこれを観ることは叶わないのだろうという現実が二重に映っていた。朗読でも何でも良いから七代目菊五郎の弁天にまみえたいと思ってしまう。きっと玉三郎の踊りをずっと見て来た人も今月似たような思いがあったのではないか。
音羽屋の流れは絶えずして。めでたくも、ちょいほろ苦き皐月かな。
ここまでお芝居のこと。
アナウンス
最初に書いたけれど、アナウンスが変わった。
開場後と幕間は女声の録音音声になった。あの、ねっとりした劇場アナウンスでなく、普通のアナウンス。
指定席であること、イヤホンガイド、英語字幕ガイドの貸し出し、筋書きの販売、携帯電話は機種により異なっているので電源の場所を確認しろなど。(すっと入ってこない日本語だった)
電波を抑制する装置があることは言わなくなった。
オペラグラスの貸し出しは復活した模様。前はオペラグラスとセットで言っていた膝掛けは言及なし。廃止かな?
消毒液への言及なし。劇場の特別警戒について言及なし。
非常口の明かり消灯に付いて言及がなくなり、耐震構造と非常の際は係員が誘導は残った。
マナーで言わなくなったことは、手すりにものを置くな、花道を通ったりものを置くな、上演中の飲食。大向こうの所定の場所と進行の妨げとなる掛け声のこと。帽子を取れも前は言ってたかなあ。
花道のことは歌舞伎座っぽくて好きだったんだけどな。
ちなみに、花道を通る人と手摺りにものを置く人は残念ながら存在しており、係の人が注意していた。特に英語の字幕ガイドを手摺に置いちゃうんだよね。
アナウンスしてもやる人はやるんだから初犯でちゃんと注意されるほうが効果あるってことだろか?
緞帳紹介は今までと同じようで、ここだけ劇場やデパートアナウンスの伝統的口調が残ったかたち。
開幕直前は男声の録音音声で四つの協力をお願いされる(ヒーローショーなの?)
携帯の電源を切れ、写真を撮るな、前傾するな、喋るなの四つで、それぞれ理由を述べるがこれが長い。
これから特別な世界に入りますので…などと言う。テーマパークかもしれない。
(これの前も”妨げとなる○○はおやめください。妨げとなります。”みたいな冗長なやつで変えて欲しかったのだが。まさか変わった後がこうなるとは。)
聞いてると前の注意を忘れちゃうので短くしてほしい。アンケートに書いてきた。
何を言ったって携帯も鳴るし前のめりもいるし、届いてほしいところには届かないものなんだよねえ。
5月は、ほか、小劇場の即興劇を1つ、ヒーローショーを2本。
来月は襲名披露2ヶ月目。ザ、歌舞伎な演目が続く。楽しみ。
(2025.5.30 junjun)