2000.12.23 国立劇場12月歌舞伎公演 富岡恋山開(二人新兵衛)
2000.12.23 国立劇場12月歌舞伎公演
通し狂言 富岡恋山開(二人新兵衛)
玉屋新兵衛/尾上菊五郎、出村新兵衛/中村富十郎、小女郎/中村時蔵、鵜飼九十郎/中村信二郎おえん/尾上菊之助、茨の藤兵衛/市川団蔵、産毛の金太郎/尾上辰之助 、ひつじのなかみは、尾上音吉。
通しの長ーい芝居。 二人の新兵衛に菊五郎、富十郎。 菊五郎・新兵衛の主筋にして恋人役が時蔵。その兄に信二郎。 菊五郎・新兵衛のいいなずけが菊之助。
富十郎・新兵衛と菊五郎・新兵衛の恋の鞘当てが中心となるのかと思いきや、そこはわりと印象に残りませんでした。
演技をするひつじくん、唐突な、でもかわいい産毛の金太郎、そして盛大な盛大なお魚の立ち回り。たのしいたのしい。
でも、そういうものがいちばんの話題でいーんでしょうか、この芝居。(ぽりぽり)
人物としてよくわかるように描かれていたのは九十郎。新兵衛の主人ですが、今は堕落しきっています。尾羽うち枯らした浪人という表現が似合うような。金があれば使ってしまう。家の宝を持ち出して質に入れてしまう。菊・新兵衛が意見をしても意見をしても、その場ではいいつくろって、全く改善される気配がない。悪人というよりは、どうしようもない人。新兵衛は主人がそういう人であるのを知っていながら、真摯に仕えています。 その一方で、主人の妹である小糸(ちらしでは小菊。)…今では小女郎と言う名で遊女になっている…となじみに。その心情はどういうものなのか。
その後の展開から読めるのは、玉屋新兵衛という人物は、女とのことよりは、男同士の世界の方に重きを置く人物であろうということ。出村新兵衛との争いで彼の額を傷つけてしまったにもかかわらず、その出村が小女郎の身請けに使おうとしていた金を家の重宝を取り戻すために振り向けてくれる。玉屋新兵衛は、自分の額を同じように傷つけてその意気に応じる。出村という人物も、身請けまでしようとした女をそんなふうに簡単にあきらめられるものなのか、不可解なところがありますが、玉屋新兵衛の方も…そりゃまあ、主人を殺してしまってからしゃあしゃあとその妹と一緒になるというのは出来ないにしても、本人(小女郎)のいるところで、他の人物へ、きっぱり切れたと言ってしまえるものなのか。まるで、おえんと一緒になってめでたしめでたしみたいなことになっているけど、それでほんとにみんなめでたいんでしょうか。不可解。不可解。 しかし、お魚の立ち回りという反則技により、その日は確かに近頃ないような充実した気分にはなれたのでありますが…。
素襖落
太郎冠者に富十郎。 大名に菊五郎。姫御寮に時蔵。なんと美しいお姫様。これは収穫。
太郎冠者。話のなかでは、物語の名手ということなのでしょう。お姫様もきっと折りにふれて太郎さんの話を聞くのが好きなんだろうなあ、と思わせるような踊り。 でも話の筋がはっきりわかるような、というよりは、富十郎の魅力発揮大会、という感じ。
大名・菊五郎は、普通。あまり困っている様子を作ってもないし、からかうのがすごく楽しそうというのでもなく、平均的にまとまっているというか。
(2001.2.17)