葉も見ずに鵜飼いゆうれい初鰹 こざかな角兵衛花子燦星(2024.8)
2024年8月に見たもの・聴いたもの
歌舞伎座 八月納涼歌舞伎
Twitter(X)から
「先日納涼見てまいりました
朝幽霊出てきて般若心経
夜幽霊否定して般若心経
間に初鰹…でしたよ
鰹売の声は家によって違うんかな
出向いて観るなら朝
いまテレビでやってくれるなら昼のがいいな
出来で言うと髪結新三なんだけど、
この暑さを差し引いて今日楽しかったなって思えるのはゆうれい&鵜。
狐花は”書きもの”と呼びたいタイプ
もっと絵的に耽美にもっていってもいいかと思いました
話は面白かったけど知ってて観る時は何を楽しみに観るかと言ったら?
横溝正史の新旧映像化作品を比べるみたいに配役と絵作りを比べたいかな
定番演出を決めずに毎回創意工夫で見たい」
以上、Twitter(X)から
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3部一気に見ました。1,2部を見ようと思った日に台風がきたので、別日に寄せて一気見になってしまった。
エナジードリンク代わりに3回とも甘酒を飲む。夜のは狐花にちなむザクロ風味の赤っぽい甘酒だったが、自分は普通のほうが好き。
第一部
ゆうれい貸屋
夏の風物をたくさん取り込んだ季節の芝居
どうして世の中腕はいいのに働きたくない男ばっかりなんですかね(いや、ばっかりではないです。隣の魚屋はよく働いてそうです。)
春にミラノ座で見た貧乏神の話とよく似た印象を受ける。あっちの方がしどころがあったかなと思うくらい今月は軽め。
原作も滑稽話の類なので読後感と芝居を見た感想はあまり変わらない。
でも勘九郎(屑屋)がしみじみ目の芝居をしてくれたんだから、巳之助ももうちょっと濃くやってくれてもいいと思う。
江戸ことばのべらんめえぶりはとても良い。こんな花形はそんなにいない。それが面白さにつながったらいいのに。もう少し時間が要るのかな…
児太郎の演ずる芸者のゆうれい染次が、とり殺されるというより物理的にぼこぼこにされそうなドスの効いた怖さ(いいのかその路線で?)。お経に苦しんでコマ送りになるのは笑う。
娘の幽霊お千代は、もうちょっと品のあるやりようはないですか?
彌十郎は二部の髪結新三も大家で、大家二連発。危なげない。
鵜の殿様
いまの実際の暑さを的確に表してるのはこっちかも
あおいでもらえる方はええなあ。冬だったら導入はまた違うのかしら
染五郎殿様の鵜のマイムは大変お上手
思ったよりずっと運動会だった、が、
若いから大丈夫でしょう…殿様は
宗之助が自分のSNSに何日かごとに「転んだ」と書いてて鮎も大変なのかな?と思ってたら、幸四郎が転ぶたびに書いてたそう
先月の水の立ち回りも松也がしょっちゅう転んでいたらしく
幸四郎がそういうのが好きなんだろか
そう言えばドリフ好きだもんなあ
赤い鮎ちゃんは笑也で、峰不二子で研究した若い子のメイクを活かしてたらしいです(ルパントーク情報)
とりあえず、朝の部は楽しく終了で、よし
第二部
髪結新三
勘九郎念願の歌舞伎座で髪結新三
菊之助のときは後半が面白かったのだけど、今回は前半の方がそれらしいかな
序盤の白子屋のくだりは去年の團菊祭の蔦之助の解説のおかげで大変よくわかった
つーたんありがとう。(なお、昨年その時は要らんと言ってました。見る前に解説まではいいとしてお教訓は要らんのでは)
先月、中車にぴったりくる役とは?と思ったが今月ははまったのでは。
勘九郎、髪結についてはまだスムーズに進めるために気を張っている雰囲気がする
忠七を連れ出してからははっきりと悪い奴
客に、あれ、変だなと疑念を持たせる時間が殆どない
すぐ悪いw
この辺の新三の荒んだ風情はいいなと思う。
七之助の忠七はうっかりおっとりのいい人ではなく、若干倫理観があやうい人かもしれない。
半分自分の意思で拐かしに踏み切っている。
新三内。
勝奴は巳之助。新三に同調する感じが強い。ワルではありそう。
あまり本人の考えがありそうにはやらず、鍵のくだりも印象薄い。
鰹売りの声は音羽屋のやつとは音の詰め方がちょっとちがうね。(私の記憶は菊十郎さんの)
乗物町の親分は幸四郎。渡世の人にしては常識人っぽい。後から意趣返しにきそうではない。
大家は彌十郎。この人がいて良かった。
思うに、自分はこの話好きじゃないんだな。
勘九郎はうまい。でも新三の魅力はよくわかんない。鰹がなかったらつらい。
紅翫
夏の物売りの人達が出てくる踊り
紅翫さんは橋之助。この人ならではの味というのはまだ見えない。
踊りはいろんな演目を織り込んだもので、あ、これわかる。
あれ?これもわかr…あー?そういう踊りなのか、しまったー、
ガイドを借りるべきだったー、となってしまった
結構この1,2年で見た記憶に新しい演目が入っており、去年だったらわからなかったかも
まま炊きの所で「一年経ってもまだ煮えぬ」って聞こえてぷぷってなったけど、そうじゃないんだよな多分。
第三部
狐花
京極夏彦作の小説と同時発表の新作歌舞伎の通し
これは新橋演舞場のものだなあと何かが囁く。
書きものでもそう思わないこともあるのに、これは「歌舞伎役者が出ている演劇」だった。
歌舞伎に仕立てることにトライしなかったのは何故だろう?
最近見た御浜御殿や天守物語の雰囲気を思い出しながら、何が違う?と考えていた
幸四郎と七之助のやりとりでは自然な会話でなく美文を語らせるので、たぶん中日過ぎてたと思うけど一部プロンプ付き。
稽古6日間だって(七之助ラジオ情報。台本FIXは稽古中だって)。
いかに歌舞伎役者といえど、歌舞伎のフォーマットに乗っ取らないものはその稽古期間ではできんということでしょう。
保さんが、観客に不親切みたいなことを書いてたけど、そういえば歌舞伎は、説明なく時系列が行ったり戻ったり、ってあまりやらないかもしれない。
これが映像や小劇場ではよくある。
普段、時系列があっちゃこっちゃいき、補足なしには意味の取れないような作品を見てると、むしろ今回のはだいぶわかる。
途中途中で客に真相を考えさせる明かし方のバランスがうまいと思う。(京極夏彦を捕まえて失礼な話だが)
そこは結構面白かった。
朝(第一部)にたくさん幽霊出して、夜、幽霊は実在しないみたいな話になるので、え?朝のやつ否定なの?お染の立場どうなるの?って少し雑念が入ったりしたけど気にしないことにしよう。
大道具は一面黒の世界を目指しているのか、花道も畳も地面も黒い。
上の階から見て、一面の曼珠沙華と鳥居のセットが回りながらセリが上がってくる美しさにははっとした。
が、途中、絵に似合わずそんなベタな時代劇みたいな話なんかい、と思ったりもした。
時代劇ならば謎解き役中禪寺(幸四郎)はご存じもの的にキャラを立たせてもいい。
そして残ったありがち時代劇じゃない所はもっと妖しく、美しく、言葉をいつくしむお芝居にできるんじゃないかなあ。
帰る道々、誰ならよかった?映像ならできた?とか考えてしまった。
この話、七之助は動かせないじゃないですか(←強めに)
あれはまさに七之助的な役。
中禪寺は誰的なものか。ちょっと困る。誰を当ててもしっくりこない。
一方で女形の方はそれぞれニンだなと思う。
お人形めいた米吉が、精一杯凛と声を張って、人形ではありません!というのも良いし、しゃあしゃあとした新吾、顔に似合わず…な虎之介。
悪の作事奉行に勘九郎。側近に染五郎。この2人は陰のある印象になった。昨年見た花の御所始末に合いそう。染五郎が年に似合わぬ落ち着きぶりでよい。
身も蓋もないことを言うと、幸四郎の鬘が似合わないのねー。
意図はわかるけど、ルパン歌舞伎の五エ門の鬘のNG版なんですよって言われたら信じるよ私。
もうちょっと似合わせカットを検討してください
昭和大学リカレントカレッジ特別企画 歌舞伎と長唄
8/4 中村鷹之資、渡邉愛子、杵屋巳津二朗出演にて
一階400名二階200名規模の綺麗なホールで三千円で大ちゃんと愛子ちゃんの踊りが見られて巳津二朗さんの講演が聞ける上に後見にまつ虫くんが出てくる(やや驚く)
翔の會が行けない日程だったので、少しでも…と思って押さえたら、このお得企画で大変ありがたかった
三味線の糸が黄色いのは鬱金であること、バチの象牙や胴の猫革が入手困難なこと等々学んだ(長唄じゃなくて三味線しか覚えとらんやないかい)
愛子ちゃんが本名で踊られるのはこれが納めとのこと
大ちゃんは素踊りで越後獅子
ラストが晒しの踊りになるのだが、そのダイナミックさ、大きな波と円弧を描く軌跡の美しさ
今月の一等賞でもいいな
踊り終えておなかが大きく波打っていた
肩で息をするという言い方があるが、この人たちは腹で息をするんだね
公式の報告やお写真はこちら
昭和大学リカレントカレッジ 2024年度特別企画(夏) 日本の伝統芸能を知る『歌舞伎と長唄』 開催しました
稚魚の会・歌舞伎会合同公演
30回。演目は吃又、太刀盗人、乗合船。
いつも稚魚の会は行けてなかった。
今年は浅草公会堂でキャパが多くちょうど夏休みの在宅期間中にあたった。三階の2列目に陣取り。
大向こうが沢山いるエリアだった。そんなに要らんと思うくらい掛かってた。練習かな。
大向こう同士でたぶん気に入らない声が掛かると、舌打ちしたりしている。キミの大向こうだってそんなに粋じゃないよ。と思ったりする。
自持ちスマホの字幕アプリ導入が国立劇場初めての試みだそう。
ものは試しで使ってみたが、近眼の老眼では手元のスマホと舞台の両方が見える視力の確保が難しかった。
前の列の人が大きなスマホを持ってて字も大きく、見えちゃうので見ていた。
太刀盗人のような段取りがきっちりしていると思われる演目でも細かい語尾が台本と違ったりするのは面白い。
下の階でスマホがよく鳴っていた。浅草公会堂の常とはいえ、これだけ身内や通が多いと思われる公演でこんなに鳴る?
5回までは数えた。もっと鳴ってた。字幕スマホのせいにしたくないなあ。演者さんはご家族ご友人へ是非音の切り方をレクチャーしてあげてください。
本当、もっと簡単に全ての音が出なくなる設定が欲しい。
あ、芝居ですが、音蔵の土佐将監が可愛いのに声がおっさんぽいというギャップで面白かった。蝶也の修理は年相応の魅力。吉兵衛の又平は一所懸命。
太刀盗人はやゑ亮の田舎者がだいぶいい男でした
乗合船は、ごめん、通人くらいしか思い出せない ごめん。
今年はもう一つ初の試みがあり、学校行事などの写真を注文できるサイトを利用して舞台写真の販売が登場
これはうまい手を考えたなあ
うちの子を顔認識で登録しておく機能があるのがなんとも言えない保護者気分
ワシらの子どもの頃は写真貼り出したりネガと一緒に写真回して、何番何番って書いて注文してたよねー(と考えると、歌舞伎座の舞台写真販売は昔ながらの風情だな)
逸青会
菊之丞センセと逸平さんの会15周年
松也ゲスト回の昼を選んでセルリアンタワー能楽堂初見参
渋谷のそっち側がだいぶ変わっていてどう行けば??って感じ
早く工事終わらんかな。
「いたりきたり」
堅い能、ゆるめの狂言、大仰な歌舞伎、の性格の違いが如実に現れる面白さ
松也くんは意外とカラフルな源氏の武者の亡霊で、ちょっと船弁慶みたいな風情で出てくるが見かけ倒しという。
ちょうど、きわみ堂で扇の的の件(と、その後の話)を予習したばかりだったのでもう大変よくわかりましたが
見てなかったら多分わかってないなあ
休み時間に客席後方から聞き慣れた声で、「私も見るまで『おれい』だと思ってました」とおしゃべりが聞こえる。え?とこっそり盗み見たら元NHKの葛西さんが。
ひょぉぉ、普段からそのお声。その話し方。
して、私も最初お礼だと思っていた演目は「お札」。おふだであった。この日は後編。舞台の階を降りてしまったり、物販の宣伝があったり、自由でした。
「流白浪燦星(ルパン三世)-空をかける星の奏べ-」
さいご、ルパン歌舞伎の和楽器コンサート
三越劇場はもう何年ぶりかわからない
前に来たのは三之助の頃じゃないだろうか
装飾が見事で壁や天井をお客さんがみんな撮りまくっていた
舞台の背景には描き下ろされた楼門
頑張ったなあ
コンサートだったらなくてもいけるのに、そこは配信の為の絵作りもあるのかな
前週に東銀座の地下でチラシを配っていた人がいて、
妙にダンディなのでよく見たら流白浪の演出を手がけた戸部和久さんだった
普通ね、松竹の社員がチラシ配ってるって言葉で想像するのは、この季節なら白いワイシャツに黒のスーツのズボンとかでしょ
確か白スーツに白のカンカン帽だった
あの格好で会社に来たんだろうか??
今回土日の昼夜公演で自分は最後の回に行ったが席が埋まるところまではいっておらず
DVDも出て世界配信にもなり、また、南座再演も決まったのだけど、刀剣ほどの再爆発ではないような
お客をのせる難しさよ
コンサートは9人編成で、二十五絃筝が2面
(今回楽器の数え方も学ぶ。鼓は1張(梃、調)なんだって)
鳴物、パーカッション(打ち物と呼んでましたね)、ドラムス、笛、尺八、津軽三味線、長唄三味線が各1名。
ドラムス以外は女の方。
MCは戸部さん
曲順は定かでないが、ルパン三世のテーマ’78、トルネード、銭形マーチ、ラブスコール、斬鉄剣、
これ以外に各楽器をフィーチャーした楽曲たち…
尺八で「祈りの道」、鳴物と長唄三味線で乱拍子、
伊福部昭の二十五絃筝曲「琵琶行」、津軽三味線とドラムスでのセッション
#大薩摩のなにかもあったけど忘れちゃった
トーク挟んでルパン三世のテーマ’80、アンコールに「小さな旅」
これもサントラ盤があるといいなあ
あと、尺八の”つまらぬものを斬ってしまう音”も是非欲しい
小さな旅のようなレガートを必要とする曲はなかなか難しいと思う
歌舞伎本編で使われた曲はどれもうまくできていて、思い切ってドラムスとラテンパーカッションを軸にしているのが効いている
笑コラでもやっていた三ツ太鼓から入るテーマのイントロもいいよね
鳴物と打楽器は互いに補完してるようでテーマでは鳴物の方がラテンのノリでギザギザのやつをシャカシャカしており(ギロではなかった。棒ささらかな??)、
斬鉄剣で、ルパンと五エ門が滝の前で3回ジャンプする所のカンカンカンという鉦(吊るすやつ)は、鳴物の所にパーカッションの人が鳴らしに来ていた
打楽器あるあるだなー
笛と尺八のパート分けが面白い
メロディの本当に高い所は篠笛だけどそこそこ高いくらいだと尺八だったりするのね
あと尺八のマイクは楽器の先ではなくて、役者さんのように演奏者の顔に付いてました
音はそこで鳴るんやな
合間合間に戸部さんと演奏家さんのトークが入る
やっぱ1日で編曲しました、明け方まで録音してましたみたいなことになってて、いやあブラックですね。
わかるけどそれが当たり前という世界はやっぱマズーだとは思う。
鳴物の方は考えて準備して使われないと悲しいので準備しないと言ってました。歌舞伎っぽいではある。
また、ここでも、楽器の材料が手に入らない話は出ており、鼓の調べ(紐)を作る人が居らず今ある分が無くなったら最後とか。
いや、その話SNSで読んではいたけど本当なんだね。いま後継者になると独占ですって。いかがでしょう。
後半トークゲストは笑也さん。トークの中身は配信もあるようなのでお口チャックしておきますけど、不二子を作り上げる話とか、花魁の歩き方はなぜああなるのかとか面白かった。
あと、戸部さんとの話を聴くとほんと、ビジネスを考えちゃう。
華やかな夢では済まない部分があり
いま叩きたい鉄を叩けないこともあるんだろうな
まずは再演決定をお祝いしつつ
メモ:この月、流白浪ととうかぶのBD届く。よきかな。