2002.7.7 国立劇場 第六十一回 歌舞伎鑑賞教室

最終更新日

2002.7.7 国立劇場 第六十一回 歌舞伎鑑賞教室

仮名手本忠臣蔵、五段目、六段目を上方演出にて。見栄えのための入れごとをばっさり切っていて合理的。 勘平を扇雀、おかるを孝太郎。
これは拾いものだった。五段目のあたりちょっと決まりが甘いなあと思ったりするが、六段目は面白い。独特のほいほいしたテンポがあり、かほどせっぱ詰まったところでも五人を包む空気に一歩引いた滑稽さが漂う。女衒源六(嵐橘三郎)べりーぐーでございます。
扇雀はミニ鴈治郎のよう。この困った男が勘平であるという説得力(つまり人間造形というところ)は多分鴈治郎だったらもっと出るのだろう。十一月の鴈治郎による通しが見たくなった。

今回の演出について、いつもと違うところを思い出せるだけ

2002.07.07 国立劇場 思いだしメモ

五段目。
千崎と出会って勘平がところを知らせるとき、千崎はメモしない。
与市兵衛は筵をかぶって出てくる。猪は普通の猪。
定九郎の大小は朱鞘。低い姿勢になってから撃たれ、血は膝に垂らしていた。
勘平は二発目を撃たない。すごい勢いで揚げ幕から出てきて、花道で火縄を回そうとしたところで火が消えてしまう。(だから、“火縄くるくる”と松の木のところで火が消えるくだりがない)手探りで歩いてゆき、松を見つけて根元に荷物をおく。細引きで探りながら、定九郎の足に細引きをかけようとしたかなー、くらいで、おかしいと気付いてしまう。(だから定九郎はわざとらしく足をあげない)
金を「借りて」花道を入ってゆく足取りはものすごく動転しており、元は武士、というところは見せない。

六段目。
おかるが髪を直すところから。おかるが父を探しに行こうかと言うと、おかやが、そなたは小さいときから在所をあるくことすら嫌いで云々の台詞。その後、一文字屋お才と源六がやってくる。
帰ってきた勘平が駕籠を押し戻して、家にはいると、お才と女衒源六は駕籠と一緒に玄関外に待たされる。
勘平は着替えるが、紋服には着替えない。足はたらいで洗う。(だから、たらいの水捨てはある。)
財布はお才の着物の余り布で作ったもので、見比べて寸分違わぬのは着物の柄と勘平の財布ということ。
夫婦の別れの間、外で待っている二人におかるはお茶を出す。たばこ盆を出さないので、荷物と間違うくだりがない。
おかるが勘平のそばに座り、そのお茶を出した塗りの盆をかざして、ちょうど七段目でおかるが手紙を鏡に映すような形になり、勘平の顔を間接的に見るしぐさ。
おかるをつれてゆく駕籠を追っかける源六、籠屋へふるなふるなと言って、いまから振ること覚えてどないする、と軽口。
与市兵衛の死骸は上手の障子のところを開け放して、そこに運び込まれる。頭が客席側で笠をかぶせてある。運び込んでくる猟師は草履で、家に上がるとき脱ぎます。
二人侍がたずねてくると、勘平はここで紋服(黒)に着替えようと押入から探し出すが(ここにおかるの矢絣が載ってる)、逃げる気だと思いこんだおかやに阻止される。おかやは家の上手隅奥のついたての向こうに隠されてしまう。勘平はそのままの服装で、刀の刀身を大きめに抜き、はっきりと髪を整えるしぐさをする。余談。勘平がいきおいよく戸を開けたらはずれちゃって、入ってくるとき千崎がはめてた。(ははは…)あ、二人侍の一人は不破でなく原。
通常のやりとりあって、「撃ち留めたるは」の勘平に「舅であろうがー!!」と千崎が一喝。千崎が上手の遺体を改めに行く。
その間に勘平はウチの下手奥の隅の方に背中を向けてうずくまっている。鉄砲傷ではなく、刀傷だ。でかした。と勘平のそばによると、勘平はもう腹を切っている。(「いかなればこそ」はない。)
#……てなわけで、勘平にとどめを刺したのは千崎の一喝で、勘平は一瞬で追いつめられ衝動的に腹切っているように見える。そこで泣き崩れる程度にしておけば、勘平は生きて討ち入りできたのだ。その辺が粗忽者。
金包み2つと財布はすべて二人侍がもってゆく。供養料は出してないと思う。
おかやが、紋服を勘平に着せ掛けてやる。勘平は手も合わせず、座って刮目したまま。(そのまま息絶えているという描写。)
そのままで幕。

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