マハーバーラタ戦記再演(2023.11 歌舞伎座) (1回目)
前回、初演は一度観ました。すごくハマったというわけではないけれど、割合満足したような気がする。
今回は再演。二日目11/3に足を運びました。
いつもはこんなに月初に観にいくことはないのですが諸事情で早めの観劇になりました。
そしたら菊五郎が出演という知らせが舞い込んできました。とてもとてもありがたい。
今月はもう一度観に行きたい (と、思ってはいます)
1回目観劇での所感を少し。
序幕の神様勢ぞろいは前よりかっこいいかもしれない。
その場が極まって次の場に向かって盆が回り始めたときの高揚といったら!
そして今回はそこがピークだった。
えーそんなことあるぅ?
たぶん一ヶ月のうちにもう少しアガるはず。
やっぱもう一回来なきゃ。
正直、初演のどのシーンを削ったかよく思い出せませんが、削ったことで消えてしまった重量をどこかで感じているのかもしれない。
比べるものがなければこういうものと思うところでしょうが、今回はあるから困る。
以下、ぽつぽつと。
米吉の汲手姫
ガンジスのほとりで突然の受難(でしょう?)に、そんなこと言われてもムリムリムリというのがよく出ていました。
成年後は、立場が変わったことは見て取れますが、おばあさんでもなく娘でもないおかあさんの年齢を表すのは難しい。若い後添え的に見える。
未熟な人の部分を残したまま、それゆえに実の子たちの対立に引き裂かれるという風情かな。
芝のぶの鶴妖朶王女
仮チラシに役の名前がなく、まさかこの役無しで?との声もありましたが、そんなわけはなかった。
この役の重要性からみて早くから決めうちされてたのではないかな。
脱線しますが、弗機王、弗機美姫は前は團蔵、児太郎。今回は本チラシにもいない。でも場面カットではなくて出ています。千次郎、好蝶。載る載らないはたぶん昔ながらの力学。
話を戻して。
鶴妖朶、鎧を着てからはいいなぁと思う。似合うし。
(立ち回りがあまり強そうでないのは、決まり決まりが弱めだからかな)
しかし最初のほうが類型通りの悪役過ぎなのではと思いました。
弟(道不奢早無王子 猿弥)と2人並ぶと余計にそう見えます。
怒られちゃうかもしれないけど、七之助、片岡亀蔵にはその人自身の醸し出す雰囲気の中に、屈折した、すさんだ影があったように思います。
今回見た芝のぶ、猿弥の組み合わせでは、割とまっすぐ同じ太さで貫かれた悪役振りというか、悪だからそのように振る舞って当然なのだという歌舞伎的な約束のほうを強く感じました。
そして変容する本心の吐露が急にくる感。「モドリ」として扱っているんでしょうかね。だからそこにくるまで徹底的に本心は見せないのかな。
だけど、個人的には、完全に騙す言葉なのか、迦楼奈に嫌われたくない心も少しはあるのかといった揺らぎをもう少し早めに感じたい。この役は急などんでん返しより、じわじわ惹かれるほうがよくないですか。
弟の最期の言葉も、初演時もうちょっと心を動かされたような記憶があります。
というか、今回その瞬間に、あっ、この台詞は!これ、前回のあの人か!、とやっと役と名前が一致して、次の瞬間には死亡。ごめんね弟。
太陽神
左團次の顔がインパクトありすぎだったので、彌十郎が普通に見える
(前回の太陽神を見たことがない方は、ぜひ探してみてください。すごい発想)
でも乙女との子をもうけようと言い出したときの、おとうさん何言ってるの感は否めない
ちょっと笑いが起きてる
ちょいちょい出番があって上がったり下がったり大変そう(詳しくは現場で見てください)
五兄弟
物に執着なく名君の素質ある長男。百合守良王子 坂東亀蔵。
彦三郎だと、実はギャンブル好きなところがあるのでは?と思ってしまうが(ごめん)
亀蔵だと、本当に王位なんかあげてもいいと思ってる可能性がある。不思議。
次男、風韋摩王子 萬太郎はいでたち的に元服前で喧嘩っ早い弟キャラ。
(萬ちゃんて不服を抱えた顔の若者多くないですか。梅枝もそんな感じよな。)
ですが、今回はその下に三人も弟がいるんですよ。混乱するー
隼人が二番目でその下に三つ子のほうがおさまりがよ(…ビーマさんが不服そうな顔で背後に立ってるのでその先は書けない)
この役は森の中を彷徨っている場面で断然よくなる。おおらかな荒事の風情で好き。
しかも前やった役の親になるんだよ。感慨深いべな。
森で出てくる妖怪の森鬼獏・森鬼飛兄妹に菊市郎、吉弥。これねえ、夜の部の鎌倉三代記みたいなことになってて、ある意味おにいちゃんかわいそう。
(菊市郎、菊史郎のリアルBros.でという妄想も、ちょっと頭をかすめるw)
三男、阿龍樹雷王子 隼人
宿命のライバル。迦楼奈の乱調人生に対して、こちらはこちらで物語があるがこの歌舞伎では語られない。ただし嫁はとる。
松也に代わっての配役は文句なしだし、ニンだと思うけど、この人もうちょっと上手くなかったっけ(色々と)
菊之助と対になるので、対比で少し甘めのところがみえてしまいます。
台詞の調子とか、立ち回りとかもうちょっとよくなると思うけど。
大富豪同心では丸く見える顔が歌舞伎だと角張って見えるのも不思議だー
能力持ちの末の双子
あれね、お屋敷に招かれたらとりあえず美味しそうな食べ物をアレするの、FFXでシーモアさんちに行ったときみたいね。
おにいちゃんは納倉王子 鷹之資。五人の中で1人だけ砥粉の化粧。道不王子との弟同士の対決が見せ場かなあ。火事から逃げおおせる描写もあったら良かったのにね。
もうひとりは 沙羽出葉王子 吉太朗。鶴王女が現れたときや賭け事大会のときの、なりゆきに戸惑っている幼い顔がなんとも言えないです。双子を賭けると言われたときの顔といったら。
13年後は凛々しくなっており、この人二枚目だなと気付かされる
膝丸のときともまた違い、役に応じた化粧が上手い
迦楼奈。菊之助。
振り返ればなんとなく義経との附合を感じる役
この役は菊之助がやる限りはこういうものと受け止めています。
そういう存在としてそのまま見てください的な所は菊五郎ゆずりだと思う
これほどの数奇な運命、もっとヒロイックにドラマチックになり得る役じゃありませんか
例えばあーちゃんの阿弖流爲に置き換えてごらんなさいよ
ほーら、な、救われない度がアップするぞ
なんなら、上方なら”悪い人でも友は友”とかいって泣いてるかもしれん
そこをこのくらいで済ませてるのが家のカラーといえばカラーかな
立ち回りや踊りでは流石の実力が発揮されます
そこに釣り合う人を育てておくれ
お話のこと
家を出た後、波羅門の生まれだと偽っているくだりがわかりづらくなっていたように思います。
ここは前はすんなりわかったので何か変えたかも。
あと伏線が効いてくる所もいくつか弱くなったと感じた所があります。
転げ落ちるような物語の力がもっと欲しい
説明でなく場面が次々と繋がることで紡がれるような
それがなければ年表を追うだけの総集編になってしまう
丑之助くん
この子は時間の流れが違いますねえ
声が出しづらそうでした。だいじょうぶかな。
破流可判(國矢)
お師匠さま。
國矢サン、今月もコワイです
行者 (千壽)
牛を誤って射た迦楼奈に、呪いをかける人
眼光がただものではないw コワイ
この世界の人のかける呪いはだいぶ具体的で
そのシチュエーションが起こることまで咄嗟に見通してかけないといけない
難度が高い
印度のひとは、なぜここまでしがらみや決まりごとを作ったのでしょうね?
がっちがちじゃない?
帝釈天 (彦三郎)
こわい。コワイ三連発w
いい化粧よね
なるほど、この声はこう活かすといいんだな
マツヤ国
まあ、思い浮かべるもんがあるよね。どんな国だろう。
(ステキなお城のある国でじゃんぼりなんとかを踊ってる様子しか思い浮かばない)
よい変化があることを祈りつつ、もう一度いけることも祈りつつ。
#本日、團蔵さんがお怪我で配役変更とのおしらせがありました。
#ううう。お大事になさってください。
(2023.11.9)
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歌舞伎座新開場十周年 吉例顔見世大歌舞伎
2023年11月2日(木)~25日(土)
昼の部 極付印度伝 マハーバーラタ戦記