2002/01/07〜02/17までの間、専用の掲示板でみなさんに投票兼コメントをいただきました。
書いていただいた内容は、2001年の時代劇ベスト5と、勝手にあげる時代劇賞(時代劇自体とそれに直接関わった人・ものに対する賞)、勝手にあげる周辺賞(時代劇の周辺分野に対する賞)、および2001年の時代劇に対するコメントです。
その記録を保存してあります。 ご協力ありがとうございました。
というわけで、恒例ベスト5の発表にうつります。
上記の掲示板で皆様に付けていただいた順位を、1位5点、2位4点、3位3点、2位2点、5位1点として集計し、総合順位を出しました。投票として有効な人数は19名様。
四位:剣客商売 (23点)
五位:旗本退屈男、聖徳太子(21点)
以下得点順に…
五瓣の椿(19点)、北条時宗(18点)、お登勢(11点)、藤沢周平の人情しぐれ町(10点)、陰陽師(9点)、御家人斬九郎(9点)、暴れん坊将軍(6点)、宮本武蔵(6点)、菜の花の沖(5点)、十手人(5点)、お江戸でござる(4点)、忠臣蔵1/47(3点)、四千万歩の男(3点)、水戸黄門(2点)、北斎の愛した楽園ニッポン(1点)
となっています。
今回は参加人数が多く、票がかなりバラエティに富んでまして、接戦でした。私も集計するまで、どうなるだろうとわくわくしてました。
1位はからくり事件帖。歴史のひとつ裏通りの嘘八百(ごほごほ)な活劇と、シリーズを通して動いている大きなからくり。あの幕末と明治の狭間の独特の雰囲気、近藤正臣をはじめとするキャラクターの力。時代劇みたいなもんが好きな人のいろんな嗜好にちょっとずつアピールしてひきつけ、気が付いたらはまってた、というような作品ではないでしょうか。昔のNHKにはこういう時代劇があった、と、そういう香りを感じさせました。
2位は鬼平犯科帳ですが、インターバルをあけて帰ってきたことがよい材料になっていると思います。思いがけず帰ってきてくれたうれしさ。期待どおりの高品質。ああ、やっぱり鬼平はいいよ、いいじゃないか、なあ、としみじみ感じた、その感動で高得点。要するにこれに匹敵する他の作品がないのです。一位に入れている人の数では「からくり」にまさっています。
3位、茂七の事件簿・ふしぎ草紙。縦軸となった原田芳雄と本田博太郎の力が大きい。同じ人情ものなら、ややインパクトの弱いしぐれ町よりこちらという選択をした人は多いかも。また、江戸の雰囲気を丁寧に映し出した映像自体も評価されています。
4位は剣客商売。鬼平と同様の安定した品質を買われています。もはや剣に期待するコメントはなく(あわわ)、安心してみられて、泣ける、という、いかにも「大治郎不在、藤まこ剣客」な評になっています。それを全員がよしとしているわけではなく、若干の「次回に期待気分」が入っていると思われます。
5位は同率で旗本退屈男、聖徳太子。双方健闘といえましょう。ちなみにこの2つは票がわれました。そりゃまあそうか。
旗本退屈男の方は「あんたなんでそんなところに…」「あんたどこで着替えを」「あんた知り合いかい」「あんたなにがおかしぅて毎回そんなにわらっとるんじゃーー」等々が快感になってしまった人の人数でしょう。多分。そういうものに飢えてたのですね。
聖徳太子の方は、大作。扱いにくい時代を扱ったことが評価されたのと、なにより、作品自体の見応え、出来映え。NHKでなければできなかった、と言ってよいのでは。
ここまでがベスト5。
次点は五瓣の椿。夜の闇を基調に燃え上がる炎、椿といった映像の美しさ。サスペンス仕立て。ちゅらさん・国仲のイメージと劇中の芝居のアンバランスさ、等々、結構アピールしたようです。で、国仲のアヤウサに「こりゃだめだ」となったかどうかがわかれめ。
北条時宗。元寇の時代というよく知られていない題材を大胆、かつ、いきあたりばったり(…おいおい)に料理しました。兄・時輔にはまった人多し。人間、自分のかけたコストに見合った評価をするそうで、文句言いながらでも苦労して見続けた人は点を入れていると思います。
お登勢。沢口靖子の強力な娘はおおむね好評。おそらく、見てない人が多い。
しぐれ町。地味にしぶく。陰陽師は、けなしながら票が入ってます。何の先入観もなく見ると、そういうものとして見られるかも。同率で斬九郎。殺陣もキャラも文句なしで面白いのだが時期が悪い。これはいつものこと。
残りは選んだ人が2人以下です。暴れん坊将軍は何度目かのリボーンがうまくいってました。レギュラーと吉宗との関係を描き直すこと、はなかなか面白いものです。10時間ドラマ宮本武蔵。よくできてたようですが、なにがよくできてたのかは忘れられています。菜の花の沖はスケール票。十手人。目立ちませんでしたが、昔はこういう時代劇はあったように思います。お江戸でござるは保護物件。忠臣蔵1/47は、一般の人をひっぱってきたので功労賞。23.9%。というか、自分で面白かった、というコメントがないんですけど。四千万歩の男は意外と票が入りませんでした。全部聖徳太子に持っていかれたか。水戸黄門はいままでのパターンをあえてはずした勇気。
北斎の愛した楽園ニッポンは、BSハイビジョンのドラマ部分もある美術番組。とりあえず記録に残しましょう。
全体的には、昨年に比べると男性的なものに票が集まっているように思います。
ついでに傾向を見ますと、1位、2位の「からくり」と「鬼平」は票がわれています。両方に入れている人は2人だけ。
逆に「からくり」「鬼平」のどっちにも入れてない人というのが3人いらっしゃいますが、この方達の票がどの辺にいってるかというと、北条時宗、五弁、お登勢、聖徳太子、ふしぎ草紙……だいたいわかりますでしょうか。
ほかに、フジ時代劇への定着票がありますが、例年と違うのは松竹(鬼平、剣客)と東映作品(退屈男)に同時に入れている人が目立つことです。
ドキュメンタリーへの出演や、インタビュー本の出版で、斬られ役福本清三さんに注目が集まりました。
あと、マンガですね。時代劇マンガが増えています。マンガ→実写への流れは、かつて子連れ狼などの名作を生んでます。夢よ再び、といきますかどうか。 ……気三郎いまいちだったみたいだけど。
私が真っ先に書いてしまったせいかもしれないけど、フジの時代劇のオープニングかっこいい、という意見もちらほらありました。あの、ばしばし斬ってゆく浪人さんは誰なんでしょうね。
ところで、ビデオをお持ちの方は眠狂四郎の「狂」の字を確認してみて下さい。「狂」じゃないはずです。あと「木枯『ら』し紋次郎」になってるので例によって一点減点。
やっとフジテレビの時代劇が帰ってきた。火曜になってちと調子がくるったが、まあいいさ。鬼平が、剣客が、斬九が見られる。喜べ。だが、作品のほとんどはストックの放出だということに気づかされる時代劇ファン。次に来るのは絶望なのか。
水戸黄門は石坂浩二に交代、レギュラー総入れ替え。弥七が、八兵衛が消えた。それに続き、TBS月曜8時枠では、32年ぶりに現代劇を放映。視聴率は「結局水戸黄門にはかなわないじゃーん」ということにはなったようだが、水戸黄門以外に持ち駒なし。
テレビ朝日・東映では、暴れん坊将軍用の1枠だけだがとりあえず時代劇が作られている。これが、またも移動の憂き目。こんどは月曜日の7時。おぼえられねーよ。下がった視聴率をタテにしてつぶそうという魂胆ではないのか?邪推するぞ。
NHKでは、江戸以外の時代への挑戦と、原作付き市井ものが交錯。
それなりに好評。歴史ものでは大河ドラマ「北条時宗」の迷走ぶりと「聖徳太子」の立派さが印象的。両方とも違う意味でやりたい放題な作品だった。
ひきつづき民放時代劇は瀕死だ。(と言いながら、長らえているのは、作り手を餓死させるわけにもいかないからか。)NHKは一定の品質をキープしつつ新しいものを模索している。テレビ時代劇は、いよいよ、NHKだからできる「道楽」の域に突入しつつある。
テレビは現代(いま)でなければ生きてゆかれない媒体だ。
思うに、時代劇はテレビに捨てられたのだ。長い長い時間かけて。
時代劇の映す世界が「いま」にそぐわなくなったら、テレビとはさよならしなければならないのだ。まあ、そんなこたぁわかってただろう。いきなり別れるわけにもいかないから、少しずつ少しずつ捨てられてきたのだ。
DVDは市場として定着を見せている。見たくても見られなかった「唖侍鬼一法眼」まで商品化。(…そして、見なくてもよかった、と思ったり。)
CSの時代劇も、DVDも、皆、過去が焼き付けられたものだ。
それを金を出してありがたがって見る人種がいる。なにしろそっちのほうが面白いのだ。
彼らにはそれが「現代(いま)をときめくなにやら」かどうかは関係ない。
そういう人のなかには、もちろん、小金をもってる人もいる。
そういうとこに時代劇の市場はあるのだ。
そこにねじれがある。かれらが買うであろうものは、しいたけやら薬用酒じゃなく、映像作品、自体だろうから。
2000年にわさわさと発生していた時代劇風CMは減ってきたと思う。
増えたのは時代劇映画。RED SHADOW みたいな、およそ時代劇とはいいがたい作品があるかと思うと、山本周五郎が流行っていたり。そこそこの数が作られているが、客は入ってるのだろうか。だいたいなんで作るんだろう??? あ、「陰陽師」は別。
だが、作品自体に金を払うのだ、という点において、いまの時代劇にとってテレビよりはマシな媒体かもしれない。少なくとも視聴率なんて、うちらの意志のかけらも入ってない数字に泣くよりは。