【渡世人の絵が書いてある】木枯し紋次郎

木枯し紋次郎。
ぼろぼろの笠にほとんど縞模様の消えた、雑巾のような合羽(かっぱ)を着て、朱鞘の長どす。左の頬に刀傷。くちびるに20センチほどの長い楊枝をくわえたニヒルな渡世人
「木枯し」の通り名は、その楊枝のところを息が通るときになる音が木枯しの音に似ているためという。
テレビシリーズは、ほぼ原作の雰囲気に忠実に作られています。
舞台はたいてい、貧しい農村とか宿場町とかで、いわゆる「ご存じ物」の時代劇のように、決まった登場人物は出てきません。
紋次郎さんを演じるのは、中村敦夫。
紋次郎がとおりかかると、ちょっとした事件が起こっている。
「あっしにはかかわりのねぇことで」と、通り過ぎる紋次郎。
ほんとにかかわりたくないんなら、さっさと別のところに行けばいいのだが、遅くなったので、その宿場に泊まることにしたとか、行った先にさっきとかかわりのあることが起こったとかで、結局かかわってしまい、最後にはたいていつかみ合いのちゃんばらをして、一人で立ち去る…という。
「木枯し紋次郎 上州新田郡(にったごおり)三日月村の貧しい農家に生まれたという…」

紋次郎はなにで稼いでいるのか

紋次郎さんは渡世人で、決まった親分をもっていません。
目的もなく、あちこち旅して歩きながら、生きているわけですが、それにしても、食うためにはお金も必要です。
では、なにで稼いでいるかというと、博打です。
その土地の親分が開いている賭場で稼いで、儲かった場合は半分くらいをおいていき、残りを自分のものにします。

紋次郎の生い立ち

エンディングのナレーションのとおりで、上州新田郡三日月村の農家に生まれ、間引きされそうになったところを、姉が助けてくれたということだ。
そのせいで、紋次郎はシスターコンプレックスの気があり、姉を思わせる境遇の女の人は助けてあげたりするが、それがどつぼにはまる元となることは言うまでもない。

飯を食う

ご飯に汁をかけて、おかずも(そんなものがあればだが)全部まぜこぜにして漬け物でかき込む。
ちなみに、紋次郎さんの食えないものはこんにゃくだそうです。

原作本

今まで富士見時代小説文庫でほそぼそと出ていたのですが、1997年の1月から月に一冊ずつ、書かれた当時の刊行順に光文社文庫で刊行されています。また、新潮社から「帰ってきた木枯し紋次郎」という新作も出ています。(これ、年齢の考証がどうも変なのですが)
テレビだと、情景描写が絵で目に入ってきますので、さらっと流れてしまいますが、小説では、例えば、紋次郎が登場するときには毎回、笠が破れてて合羽が汚くて、傷があって、楊枝をくわえていて、その楊枝の長さは、当時としては珍しくなくて、長ドスを持っていて、虚無的な表情で、うんちゃらかんちゃら、というのを説明します。
はっきり言ってうっとおしいですが、そのおかげで、どの話から呼んでも一向に構わないようにできています。また、決まった登場人物も、紋次郎しかいませんから、読者はその短編の中だけの人間関係を追えばいいので、前に読んだことを覚えている必要がありません。
周りの風景についてもかなり具体的な描写がされています。
何作か続けて読んでいる場合、何年のいつ頃紋次郎がどこにいるかということが毎回分かるようになっていますので、これを追っていくと紋次郎の歩んだ道のりが分かる仕組みになっています。

どんでんがえし

木枯し紋次郎では、必ずどんでんがえしがあります。
お約束になってしまっては、すでにどんでんがえしでない気もしますが、あれ、今回はひょっとして”どんでんがえしがない”のではと思わせるほど、順当に物語が進んでいるときも、やっぱり、必ずやってくれます。
だいたい、人が幸せになることは極めて少ないドラマです。

原作:笹沢左保(木枯し紋次郎シリーズ)
テレビシリーズ(フジテレビ)
監督(演出):市川昆
主題歌:上條恒彦(六文銭)


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junjuns@geocities.co.jp Last modified: Tue Jan 20 10:34:07 1998