6月は眠四郎です

戦後誕生した、虚無的な剣士、眠狂四郎。そのすずしげなまなざしは物語の中でも、テレビの前でも、人々を惹きつけてきました。

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眠狂四郎

眠狂四郎は、昭和31年(1956)に柴田錬三郎によって生み出されたキャラクターです。
黒い着流しの細身の浪人。その面差しは、異人の血が混ざっているように彫りが深く、冷たい。
狂四郎は、ころびばてれんと日本の女との間に生まれました。狂四郎は幼い日に母の遺骸を自分の手で埋め、墓石を刻みました。(その文字は原作では「霊」とありますが、旧・田村版では「母」)彼が成長するにつれ、自分の半分の血が異人の血であることと、母と父との関係を悟り、そのために自分の生まれをのろい、キリシタンの宗門を憎むようになりました。彼の何も信じない虚無的な態度はそのような生い立ちから生じています。その心を晴らそうと剣を修行。結局剣の才能を発見したものの、心の平安を得ることはなりませんでした。
そのときに編み出したのが円月殺法。地面をするような下段から、ゆっくりと円を描くように剣を回してゆく。その剣が半円を描くのをまたずに、対峙した敵は意識を失い、思わず斬り込んだ次の瞬間には狂四郎の手に掛かっている、というもの。
その狂四郎に、惹かれる女性は数知れず。狂四郎はそれを抱くこともなぶることもある。およそ、お茶の間のテレビから流れてきたら、目のやり場に困るようなやばい場面がちりばめられています。ただひとり、美保代という女性とお互いに縁を感じ合いますが、孤独な生まれつき故か、すれ違いを重ねます。
狂四郎の行く先々で、そのふれあった人々を待ち受ける不幸と死と。狂四郎はまたひとり、その地を後にします。

どこがハーフやねん

狂四郎を演じた俳優をあげてみましょう。まず有名どころで映画の雷蔵。松方弘樹。テレビでは、江見俊太郎、平幹二郎、田村正和、片岡孝夫。(映画の最初は鶴田浩二。)
雷蔵の影響が強いためかもしれませんが(松方はともかく)、すっきり系の美形が目立ちます。柴田錬三郎が田村正和の狂四郎を気に入っていたというのは有名。
設定が、ハーフですから、髪は茶色く、顔色は白くという仕立てになっているのですが、顔が、顔が日本人だ。不思議に、バタくさい(死語)顔の俳優さんはこの役にあたりません。(松方はともかく)
昔の草刈正雄なら、なんとかできるかも知れないなあと思いますが、顔が異人風なのにすっきりとクール(を通り越してコールド)に見えるというのは難しいのかもしれませんね。

円月殺法

円月殺法。これこそが、(キャスティングを別にすると)この作品のいちばんの難関ともいえます。だいたい、刀もって手をぐるんと一周回そうとしてご覧なさい、できないよ。…この点については、途中で刀を返すという型があって踏襲されているようです。
で、この催眠術のような、幻想的な剣を映像で表現するとなると、合成、CGといった技術を持ち出さざるを得ない。もちろん効果音駆使。しかし、これで納得のいくものを作れるかというと、大変疑問です。
かくして、新作が作られるたびに、円月殺法を見ては、最高のクライマックスで最高にがっかりするという困った結果が生み出されています。
円月殺法って、ほんとはどんななんだろうなあ。
最近の田村スペシャルでは、円月殺法は光を利用するので闇夜では使えない説が急浮上しており、狂四郎絶体絶命、そのとき○○の光が!というパターンを作っています。…定着するのでしょうか (^_^;;;;;)

すけべ

帯解き殺法。なーんじゃそりゃだが、悪いお姉さんたちを辱めるときの帯ぱらりんのあれだそうで。
時代小説ではよく、用もないのに筋と全然関係ない濡れ場が用意されていたりしますが、狂四郎の場合は用意されているどころかほとんど世界観の一部になってます。エロティシズム、という便利な言葉があるが、それが足りないと、あとで批評に書かれたりするとんでもない時代劇。
旧・田村版では、涼しい顔して裏で何やってるかわからんというか、言い寄ってくる女をいいようにして後は無視、みたいなイメージで、相当女に対して酷い狂四郎。孝夫ちゃんの方は、惚れられることは惚れられて執拗に迫られるのだが、女の情をはねつけるストイックなイメージがあります。さらに言わせてもらうと、よりまっとうな人間と見えます。

データ

1999.6.13までの判明分(年代順)

眠狂四郎無頼控
1957.7.3-9.25
日本テレビ
キャスト:眠狂四郎/江見渉(現 江見俊太郎)、池内淳子
特筆事項:「TELEVISION ARCHIVES」によれば、初のテレビ化。

眠狂四郎
1961.7.6-1961.11.28
日本テレビ
江見俊太郎

眠狂四郎
1967.7.3-1967.9.25
フジテレビ
平幹二郎

眠狂四郎
1972.10.3-1973.3.27
フジテレビ
制作:関西テレビ放送、東映
プロデューサー:野添泰男、松平乘道、杉本直幸
脚本:池田一朗、高岩肇ほか
監督:井上昭、田中徳三ほか
音楽:渡辺岳夫
主題歌:(ED)「孤独」(作詞)柴田錬三郎、(作曲)関野幾生、(編曲)小山恭弘、(唄)沢竜二
キャスト:眠狂四郎/田村正和、美保代/山本陽子、文字若/野川由美子、金八/山城新伍、ナレーター/高橋昌也
特筆事項:エロティシズム趣味(特に帯解き)と、柴錬が狂四郎のイメージとして田村を挙げていたこととが、よく取り沙汰される。赤と黒を基調とした美が独特で、若くて美しいが理解しがたい田村正和・狂四郎、付けまつげバシバシの女優陣。血がだらだら流れる残酷なストーリーに幻想的なビブラフォンや優しげな女性スキャットが合わさる妙。と、70年代だからこそ出来上がった作品といえる。

眠狂四郎円月殺法
1982.11.24-1983.3.30
テレビ東京
片岡孝夫(現 片岡仁左衛門)
特筆事項:田村版に比べるとストイックで、淡泊な味の狂四郎。

眠狂四郎無頼控
1983.4.6-1983.8.31
21:00-21:54 (1話はスペシャル 21:00-22:54) テレビ東京
監督:山下耕作(1)
キャスト:眠狂四郎/片岡孝夫(現 片岡仁左衛門)
特筆事項:「前シリーズより狂四郎のニヒルとエロチシズムがいっそう強調されている」(毎日新聞テレビ欄。第一話評)

【単発】

田村正和時代劇スペシャル眠狂四郎
恋時雨円月殺法! 将軍家若様乱心の謎を斬る
1989.6.22
テレビ朝日
脚本:保利吉紀
監督:田中徳三
キャスト:眠狂四郎/田村正和、長岡采女正/山内としお、志津/多岐川裕美、徳川家慶/船越栄一郎、金八/柳沢慎吾

田村正和時代劇スペシャル眠狂四郎
江戸城に渦巻く陰謀! 母よ、妻よ、女たちよ、円月殺法ご照覧あれ! 」
1993.9.30
テレビ朝日
脚本:中村努
監督:井上昭
キャスト:眠狂四郎/田村正和、徳川家慶/若山騎一郎、明子/子柴香織、酒井/綿引勝彦、薫/武田京子、水野/伊藤孝雄、美保代/竹下景子

眠狂四郎
   1996.09.19
    テレビ朝日
田村正和

眠狂四郎
「雪の夜にわたしを殺して! 狂四郎を愛し続けた女」
1998.12.28
テレビ朝日
田村正和
詳しくは→1998年の時代劇



参考文献・参考サイト
(番号は当サイト内で使用している統一の番号です。番号が飛んだりしているのは、そのためです。)
(1) QA 1990年7月号 [雑誌]
(17)蔵出し 絶品TV時代劇
(近藤ゆたか編、フィルムアート社刊 1997)[単行本]
(20)みんなのテレビ時代劇
(特集アスペクト40 アスペクト刊 1998)[単行本]
(21)東映京都テレビ映画25年(東映京都スタジオ1982)[冊子]
(25)実録テレビ時代劇史 ちゃんばらクロニクル 1953-1998(能村庸一著、東京新聞出版局刊 1998)[単行本]
(未採番)毎日新聞縮刷版
(未採番)TELEVISION ARCHIVES テレビ番組記録 Vol1(1953-1970) (財団法人放送番組センター発行 1990)


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Last modified: Fri Jul 23 02:57:21 1999