吉例顔見世大歌舞伎(2000年11月 歌舞伎座)

「吉例顔見世大歌舞伎」

歌舞伎座
2000年 初日11.1, 楽 11.25
昼の部 11:00-
梶原平三誉石切,鴛鴦襖恋睦,沓手鳥弧城落月,乗合船惠方萬歳
夜の部 16:30-
ひらかな盛衰記,忍夜恋曲者,らくだ

2000.11.11 歌舞伎座
#この文章は、まささんのWebサイトに寄稿したものに加筆・修正しました。

らくだ

駱駝の馬太郎(変な名前だ。演ずるは団蔵)が河豚にあたって死んでしまい、友達の遊び人半次が形ばかりのお弔い。そこへ屑屋の久六が通りかかる。久さんは駱駝とはまんざら知らぬ仲でもない。 半次は気の弱そうな久六に、大家から弔い金をとってこい、ことわったら死体にかんかんのうを踊らせると脅せ、と差し向けるが、大家はくせ者。だが、そこでひきさがる半次じゃない。ほんとに駱駝を久六に背負わせ、大家宅へGO。まんまと酒と煮染めをせしめて駱駝宅で酒盛り。ところが酒が入った久六は......というような芝居。

三回拝見。 11日の芝居は、前に見たときよりも笑えるようになっていると思いました。

この芝居のいかんところは、やはり、落ちの弱さ。一回目見たとき、こんなと ころでおわるの?と肩透かしを食らいました。
11日は二回目でしたが、ここで 終わるなとわかっていたので、あっ、漬物桶がオチだったのかっ!そうかそう か。やっとわかったさ。という気分。
あと、遊び人の半次(八十助)と久六(菊五郎)の力関係が、あまりビジュア ルに納得できないところがあります。半次、もっとこわそうなほうがいいなあ。 これ、配役逆だったらどうだろうな、などと考えていました。

菊五郎ダンナ。一回目に見たときは、いくらつくっても男前は隠せねえ、系の顔が見えていて、 それがまた、「半次よりこいつの方が上手(うわて)なんじゃないのか?」と 思わせてすこし邪魔だったのですが、二回目、三回目には、きたねえオヤジぶ りになっていました。
家財道具数え上げ長台詞は、この日はたしか成功してい たような気がする。
(ということは、私が見た他の日はかんでたわけです。(苦笑) がんばれ。おやぢ。)
死体を背負って、死体くんがしなだれかかるんで、顔を避け避けしながら待っているあたりが、ひとつの見せ場ですが、ここは、技でこなしているという感がないでもない。
ほんとうの見せ場は、酒を呑んだ後ではないかと思われます。ひとがかわる。この面白さを期待したいのですが、ここは短め。

菊之助が、半次の妹の役で一瞬でてきます。 言葉はああいう風でも、体はもう少し女らしくなんないかな。腰の位置が高い とか、足の長さを見せるとか、30年程前の「菊之助」(=菊五郎)に対する劇 評で見かけていましたが、こういうことだったんだなあ、と目で見て納得して しまいました。棒みたいなのね。 さらさらっとこなしていて、気持ち悪くないのはよいです。

大家さん夫婦はテンポのせいかな。すこしそらぞらしさを感じます。舞台が回 るときに塩を撒きながらへなへな腰を抜かす奥さんがおかし。

まー、この舞台のスタアは、やっぱ團蔵・らくだの馬太郎ですねえ。 でかくて存在感のある無口な(あたりまえだ)死体。いいしごとしてますわー。
八十助本人が危惧してたとおり、らくだの後ろに立つと八十助見えないし。そこがま たおかしい。 この面白さは、前で没入して見た方が伝わります。些細なところにもぎゃー ぎゃー笑いながら見るのがシアワセだと思う。
ストーリーが面白いか、といったら、それはどうだろうなあ。


他の演目。

石切梶原

團ぱぱの梶原景時。梶原って、この芝居のどの時点で刀を手に入れようと思っ てたんだろうな。と、見終わってから妹に話す。 (そしたら、ネット上で同じことを考えていた人がいたのを見つけた。そう思うよね。やっぱり。) 全部こいつの策略だったらすごくやだなー。 前に見たときはそういうことは思わなかったけど。
俣野(正之助)が、やなやつで、やなやつで、やなやつ...なので、なんだかそ の雰囲気が場を支配してしまって。この梶原には、それをすかっと吹き飛ばす ほどの爽快さはないような。 時蔵の梢ちゃんは、あいかわらずかわいいですが、出てる間じゅうなにかを力 いっぱいアピールしてて、いや...今はじっとしててもいいわよ。とか、思って いました。

鴛鴦襖恋睦

鴈治郎の美しさ。ほっそりとして、前の月の国立劇場(小栗判官)よりも美し いように思えます。
菊五郎、鴈治郎、吉右衛門と並んで踊りますが、これが、役ではなくて、菊五郎、鴈治郎、吉右衛門、というふうに見えました。わたしは、菊五郎・吉右衛 門という組み合わせの時には、ときどきそういうことを感じます。今回はそこ に一人増えてしまった。
鳥になってからの方が面白いです。
菊五郎は、前月の御園座の女形を見たとき、ハリがないかも。ちょっとつかれ ているのかなあ、と感じていましたが、この役を見て、やっぱり疲れてるのか もなあ、と思ってしまいました。 ぴちぴちな鴈治郎と比べてしまったせいかもしれません。

孤城落月

冒頭の戦(いくさ)は、一度は見ておくべきもの、のうちに入ると思われます。
七之助の裸武者が、細い体で奮戦。 若い役者さんが、傷つき倒れゆく様子を演じることが、痛々しさを感じさせま す。
愛之助が、関東では女形が多いんだけど、今回は立ち役。かっこいいよね。
さて、この戦と、その後の城内の様子が、なんだか、つながらない。 なんで淀君がああなっているのか、ということが納得できない。そこを納得させるためのつなぎがこのお芝居には必要なのではないでしょうか。
幕切れも中途半端。秀頼(菊之助)が決断したこと、がこの芝居のラストの拍 子木にあたるわけで、その決断には、いまの10倍くらいの重さが感じられても よいくらいです。 菊之助はよくがんばっていると思うけど、それだけでは、このお芝居もちこたえられない。
菊五郎は、氏家内膳。昼夜通してどういうわけか最も菊五郎らしさを感じた役 です。 ただ、台詞が長いもんで、田之助・大野修理との論戦では、 ああああああ、台詞、かんでるかんでる、とやきもきしてしまいました。

乗合舟

たのしい踊りです。 芸者・孝太郎がかわいい。 辰之助もかわいいですが、ちょっとやっぱり、背が高いのが目立ってしまうな あ。
この踊りは華やかで救われる感じですが、それでも、昼の部全体のテンション の低さは回復できません。

逆櫓

あんまり何も考えないで見てたんで、ぼーっと過ぎてしまいましたが、よいお 芝居だと思いました。こんどは、吉右衛門だー、というふうに見えないもんね。
(芝居の見せ場「頭が高い」で、樋口が、あんた何様??、という奴になって  しまうのが、実は、嫌いなのですが、そういう芝居だから仕方ないですね。) 鴈治郎きれいです。
左團次の権四郎は、ちょっと恐すぎっていうか、出っ張り すぎなごつごつした感じがします。
今回は「遠見の樋口」がありました。かわいい。
最後の立ち回りは、ただただ、とんぼがえり辰巳を見てました。よく目立つなあ。彼は。

将門

これが、結構よくて。踊り中心なんですが、飽きもせずにじーっとながめてま した。
最初のところの、ろうそくでの面灯りも風情がありますね。
雀右衛門・如月は、ちょっとしたところが、ああ、女形というのはこういうも のなのねえ、と感じさせます。
それと、ぶっかえってからの滝夜叉姫が、こえーのよ。顔が。
あと、蛙ちゃん(蝦蟇)がかわいい。天竺徳兵衛のときには、大きすぎる舞台 を、のたのたともてあましていた蛙ちゃんでしたが、今回はしぐさのかわいさ が、なかなかフィットしていたと思います。 あれ?かわいくみえちゃだめなのか?

(2001.2.17 junjun)

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このページは、junjunが2001年2月17日 00:00に書いたブログ記事です。

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